リンパ浮腫とは

8月末をもちまして、初診患者様の受け入れを終了させていただきます。

心臓からは動脈によってたくさんの酸素や栄養素を含む血液が全身に供給されています。
組織がその栄養を受取ると、次に静脈が全身の老廃物を心臓に向かって運んでくれます。
リンパとは、血液と同様に全身にはりめぐらせたリンパ管の中を流れているリンパ液のことで、リンパ管を流れるリンパ液は静脈のような役割をします。
主に静脈で処理しきれない細菌やたんぱく質、過剰な水分がリンパ管に流れ込み、リンパ液となりリンパ節できれいにろ過されて心臓の近くで再び静脈と合流します。これが正常なリンパシステムです。
ところが、がん手術に伴うリンパ節切除や放射線治療、リンパ機能の発育に問題が生じると、このリンパシステムが正常に機能しなくなり、腕や脚にむくみが生じます。これがリンパ浮腫という疾患です。
当院では、むくみを主症状とするリンパ浮腫について、超音波検査を用い鑑別診断を致します。
リンパ浮腫と診断された場合は、併設されている治療院「あしの治療院」にて治療を受けます。

リンパ管の解剖

心臓から動脈を通って流れる血液は、酸素や栄養分を含み体の隅々まで送られ、組織で不要になった老廃物などが、静脈とリンパ管を経由し心臓まで戻ります。

各組織内のリンパ液は、毛細リンパ管、集合リンパ管、リンパ本幹、胸管を通り静脈内へ流れ込みます。リンパ管の所々にリンパ節が存在し、体内には600~700個存在します。

リンパ節では体内に取り込まれた細菌などを処理したり、リンパ液内の不要な水分を静脈内へ再吸収する結果、蛋白が濃縮されます。

毛細リンパ管壁は内皮細胞が重なり合ってできており、この重なり合った部分が開閉し、リンパ液をリンパ管内へ吸収しています。毛細リンパ管内には逆流防止弁は存在しないため、多方向にリンパ液が移動します。

集合リンパ管には弁があるため逆流はせず、また、リンパ管壁に存在する平滑筋が能動的に作用し、リンパ液を一方方向に流します。最終的には右上半身のリンパ液は、右リンパ本幹から右鎖骨下静脈の静脈角(戻り口)に、また、その他の部分を流れるリンパ液は、胸管を経由し左鎖骨下静脈の静脈角へ流れ込みます。

リンパ浮腫とは

リンパ浮腫はタンパク質を多く含んだリンパ液が異常に蓄積する結果、浸透圧の高まった組織内に水分が引き込まれ貯留した結果起こり、主に四肢に起こることが多いのですが、顔や腹部、外陰部などにも起こります。
リンパ液が貯留してしまう原因は大きく下記のように分類されます。

リンパ浮腫とは

原発性(一次性)リンパ浮腫…

先天異常等によるリンパ液の循環システム異常によるもの(発育不全・過形成・無形性・鼠径リンパ節の線維化)

  • 先天性リンパ浮腫 ⇒ 出生時に発症
  • 早発性リンパ浮腫 ⇒ 生後から35歳までに発症
  • 晩発性リンパ浮腫 ⇒ 35歳以降に発症

続発性(二次性)リンパ浮腫…

後遺症として循環システムが正常に作動できなくなったもの

  • がん治療の手術によるリンパ節切除・放射線治療
  • 悪性腫瘍の圧排によるリンパ流路狭窄・閉塞
  • フィラリア等感染
  • 外傷に伴うリンパ流路途絶
  • 廃用性浮腫:加齢や整形外科的疾患(変形性膝関節症等)による稼動制限に伴い、筋力が低下するため下肢の静脈及びリンパの循環が滞る
  • 慢性静脈不全:静脈の機能不全

リンパ浮腫の診断

まずは問診による病歴の確認が大切です。いつからむくみだしたのか、きっかけはあったのかなど、既往歴を含めて確認することが重要です。ここで得られた情報をもとに、視診・触診による浮腫部位の確認や周径計測を行います。

問診・視診・触診により確認できる身体所見が以下です。

  • ゆっくり発症し、進行性である(蜂窩織炎等の炎症を伴う場合を除く)
  • 早期では指で圧迫した際に、圧痕サインが見られる
  • 原発性の場合は遠位から、癌の治療後は近位から発症しやすい
  • Stemmer’sサイン陽性
    (高タンパクの組織液が貯留するため、皮膚がつまみにくくなる。足趾に浮腫が発症するのはリンパ浮腫の特徴)
  • 足背部のbuffalo hump(足の甲が浮腫によりこぶの様に隆起する)
  • 足関節部の形状変化(浮腫により足首の輪郭が消失)
  • 蜂窩織炎を発症し繰り返す
  • 疼痛を感じることはまれだが、四肢の不快感(重量感)がある
  • 皮膚症状:過角化症・乳頭腫(乳頭状に増殖する良性上皮性腫瘍)・苔癬化・橙皮状皮膚
  • 皮膚潰瘍は通常ない
  • 皮膚の水分や弾力性は長期経過しても保持される(静脈疾患とは対照的)